種蒔きについての予備知識や注意点をまとめてみました。どうかご参考にしてください。
☆実の中に種がある
種は湿った果肉に包まれています。果肉には発芽を抑える物質が含まれていて、適温、適湿になるまで待機しています。
☆鳥が好む赤い色
鳥の消化管を通ると果肉が消化されるので、発芽しやすくなります。
鳥の視覚はヒトに似ており、脊椎動物の中でも霊長動物と鳥類だけが色覚を持っています。
樹木の果実の色は赤と黒が多いのです。多肉果は鳥に発見されやすいことは重要で、赤や
黒は緑色をバックにした場合、最も目立ち、果実の色は鳥を引き寄せるための誇示であります。
鳥の消化管を通ると果肉が消化されるので、発芽しやすくなります。
種の皮が硬く水を吸収しないので熟した実ほどそのままでは発芽しにくい性質があります。こういう硬実のものは硫酸に浸したり熱湯処理したりする方法もありますが、ナナカマドの場合は、完全に熟する前に取播き(取ってすぐ播くこと)するとよいでしょう。
もしタイミングを逸して実が熟してしまったら、種にキズをつけて水を吸わせてから播いてみてください。細かな粒のサンドペーパーの上を軽く転がすのも良いでしょう。
赤い色は緑の葉の補色ですし良く目立ちますが、黒い実は何故黒なんでしょう。桜は赤から黒に変わります。赤いから熟しているかと種を播きましたが不発でした。次の年は黒くなった種を播いたら発芽しました。クロモジ属(クスノキ科)ってのがありますが、
○クロモジ節・・・クロモジ、ヤマコウバシ
○シロモジ節・・・シロモジ、アブラチャン、ダンコウバイ
シロモジ、アブラチャンはうす緑色から茶色に変化しますが、後のクロモジ、ヤマコウバシ、ダンコウバイは、晩秋の枯れ葉がほとんど落ちる頃に、黒い実を付けています。
遅まきの実だから黒いのでしょうか?
☆採取の時期
ほとんどの種は、熟さないと発芽するまでに至りません。樹種によって実が熟する時期があり、また、採取する場所(山の高低や日当り)により、その時期も変わります。ほとんどの木が10月初旬から11月初旬にかけて実るようです。ただ、春に花が咲くサクラ、ニワウメ、オウトウなどは5月、ブルーベリー、五葉松の一種は7月末・・など、木によって時期があります。
小まめに通い、採取時期を見過ごさないように、メモって置きましょう。
☆取り播きor春播き
「取り播き」は採取したらすぐに播く事で、「春播き」は秋に採取した種を冷蔵庫保管し、翌春に播く方法です。冷蔵庫の管理者に異論がなければどちらでも良いのですが・・・、
◇取り播きの注意点・・用土を発芽まで乾燥させないこと。
◇春播きの注意点・・・種を乾燥させないようにすること。冬の寒さを冷蔵庫(野菜室)保管で経験させる事。播くのを忘れないこと。カビの管理をする事。
◇乾燥している種・・水に一昼夜浸し、充分に水を含ませます。(どの程度の期間水に浸けるのか・・・種が沈むまで。1週間とか。それでも沈まなければ、チャック式のナイロン袋に種と水を少量入れ冷蔵庫の野菜室にて1ヶ月程度放置しておくと、沈むものが増えます。ただ、それが全て発芽するかどうかは?ですけどね。
◇ジベレリン・・・・発芽促進にはジベレリンが効果的ですが、通常は必要ありません。
☆用土は
◇酸性を好む木があります。
ツツジ、石楠花、ブルーベリー、ナツハゼなどは鹿沼土+ピートモスなど弱酸性土が良いでしょう。私的には区別しないで赤玉土に植えるほうが好きです。鹿沼土は水持ちが良いので、水やりが好きな私ん家では発根が悪いように思いますので。まあ、果たしてそれが原因なのかどうかの根拠はありませぬが・・・なんとなくってヤツです(-_-;)
◇新しく清潔な土に播く。
目に見えない細菌により、ウブな新芽が腐ります。古い土は避け新しい用土を使いましょう。
◇光の量の多少で発芽する 嫌光性or好光性種子
好光性種子は光に反応して発芽するので、薄暗い場所でまき床を管理しているとなかなか発芽できません。こんなときは、日光の当たる所にもっていくと、発芽することが多いです。
覆土も好光性種子の発芽不良の原因になりますので、必要以上の覆土は不要です。
ちなみに光の質ってのがありますようで、午前中の日光は紫外線が多く光合成にも大変都合が良い。午後の日光は赤外線が多いため、葉温も上昇して消耗する。
しかも光合成が一日を通じて最も活発な時間帯は午前中だとか。
いかに午前中の光を当ててやるかですね。しかも、花を咲かせるには光を充分に当てることが必要のようです。
◇発芽に必要な温度
光と関連しますが、発芽にも必要な温度があります。春先は寒いですから、日陰では発芽しないこともあります。出来るだけ、東向きの朝日が当たる場所を選びましょう。
◇細かな種は水苔に播く
山野草やブルーベリー、ナツハゼなど粒が細かい種は、水苔を小さく砕き敷きつめた上に覆土
せずに播きましょう。水やりも強いシャワーは避けましょう。
☆苗腐れ防止に・・
新しい土とは言え細菌が発生し、発芽した当初の茎が柔らかい時期に土と接する箇所から腐ってい く事があります。特に水をやりすぎて湿気が多くなりがちとか梅雨の時期は要注意です。
腐れ防止には、種を播いた時にオーソサイド水和剤を散布しましょう。また、1ヶ月に一度は散布 しましょう。また、そのような症状が出たときや梅雨の時期にも散布します。オーソサイド水和剤 が無ければ、ダコニール水和剤かベンレート粉剤でも良いでしょう。・・・って、殺菌剤なら何で
も同じだと思っていたが、予防と治療またはその両方という3つの
区別があるらしい。
予防
STダコニール1000、オーソサイド水和剤(種子、球根の消毒)
治療
カリグリーン(ウドンコ病)、ベニカマイルドスプレー
予防+治療
トップジンMスプレー、トップジンMゾル、ベンレート水和剤、ストマイ液剤20
☆水やり
葉や根が出ていないから、頻繁な水やりは不要だが、種が乾燥しない程度の保湿は必要で、表面の土が乾いたら、鉢の底から水が出るまでタップリ与え、土中の空気を入れ替えましょう。
旬の季節のものはよく活動するから、土もよく乾きます。
☆ナメクジ、ダンゴムシ
ダンゴムシもナメクジも一見無害に見えますが、若芽や若葉、花弁を好んで食べます。食害されたところは穴が開いたり、生長を止めてしまう事がありますので、早めに退治することが肝要です。
ナメクジは、夜間に懐中電灯で見つけては捕殺しています。春のなるべく早いうちに、ナメクジチェックをすることをお勧めします。春の盛りになってから、大量の繁殖ぶりを見つけたときは、もう手遅れですから。早春の卵を産みつける前に根絶しておけば、春に被害が少なくてすみます。ビールを入れた器を置いたり、バナナの皮を置くよりも、20時以降の夜間の見回りと捕殺です。塩を振りかけたら、苗も枯れますよ。ナメクジの活動期は3月から11月まで。産卵は3月とか。
ナメクジ退治の特効薬は椿の種の搾りカスのようで、市販もされてますね。「椿 ナメクジ」とかで検索してみてください。ただ、畑にはダメだそうですね。ミミズも死んでしまうし、その溶けた水が川に流れ込むと魚も浮くんだとか。
もう一つは、ビールに反応することから、「酒かす+メタアルデヒド」が効果的らしい。メタアルデヒドは市販のナメクジ退治薬に5%程度配合されてますから、これを混ぜる。どの程度混ぜればいいのかは不明でしたが、この辺はナメクジに聞かなきゃ分からない(-_-;)
関係ないお話ですけど、蚊取り線香ってのは蚊を寄せ付けないようにしたり、せめて気絶させる程度のものらしい。温暖化のせいで、冬にも蚊が飛んでる。キンチョーの夏のコマーシャルも、キンチョーの冬・・になるとかならないとか(~o~)
冬場の石灰硫黄合剤の散布を2回にしたら、ナメクジとかダンゴムシにも効果があるように思う。
ダンゴムシは鉢の下に居るし、鉢の用土中にも居るので散布は効果的だ。
☆2年目に発芽するもの
種を4℃で保管し翌春に播種した結果(岩手県林業技術センターの研究成果速報H12.2.4より引用)
※1青字は私の経験上
◇当年発芽 トチノキ、コナラ、ミズナラ、クリ、クヌギ、カシワ、サワグルミ、キハダ、カラタチ、アキグミ、スズカケノキ、ムクゲ、サルスベリ、キングサリ、ハナズオウ、マメツガ、カツラ、アオダモ、マタタビ、イタヤカエデ、オニグルミ、タニウツギ
松類(赤松、黒松、五葉松)シデ類(イワシデ、クマシデ、アカシデ)ニオイカエデ、
ヒメシャラ、ブナ、ザイフリボク、チャ、ツバキ、シデコブシ、カマツカ、カリン、キンズ、クマヤナギ、シバグリ、シャリンバイ、ナツハゼ、ヒメリンゴ、ビナンカズラ、
※2オレンジの文字色は90%程度当年発芽
◇当年〜翌年発芽(半数程度が当年、翌年)ハクウンボク、ネムノキ、イヌエンジュ、ボケ、カスミザクラ、
◇翌年発芽(2年目発芽)ハマナス、ケヤキ、エゾヤマザクラ、クロモジ、エゾエノキ、ニワウメ、シダレモモ、ナナカマド、シロヤマブキ、ベニシタン、ミツデカエデ、ヤマモモ、イロハモミジ、ハウチワカエデ、コミネカエデ、ニシキギ、マユミ、ツリバナ、オオカメノキ、ミヤマガマズミ、カンボク、マンサク、ハシバミ、サンショウ、エゴノキ、ホオノキ、ハリギリ、イチイ、
※3グリーンの文字色は70%程度翌年発芽
☆ネームプレートは忘れずに
憶えてるから大丈夫・・なんてのは3日間だけです。必ずプレートを付けましょう。それによって、水やりの頻度や日差しの当て方が変わります。
☆気が向かない日には播かない事
ついつい、いい加減な種播きになります。せっかく求めた種ですから、気持ちが向かない時は
無理に種を播くのはやめましょう。
☆種は乾燥すると休眠してしまう
種に限らず、木でも暑かったり、寒かったりすると休眠してしまいます。人間のように、服を着たり脱いだりが出来ませんからね。「もう・・暑くてやってられない」って気絶してしまうんでしょうね。休眠させないように加湿して保管するとかの方法も必要です。
また、休眠を打破させるには一定の低い温度に必要な期間置いてやる事。もしくは夏の暑さを感じて打破するものもありますから、保温器で加温し休眠打破の調整をすることで、より早く発芽させることも出来るようです。種をだまして発芽させる訳ですね。
▼・・豆科のアカシヤなどの種子はなかなか発芽しない。ところが湯呑み茶碗に種を 入れて煮えたぎった熱湯をかけ、湯が自然に冷めてからまくと70%以上発芽する。湯によって休眠から覚めるので「湯ざめ」と言われている。
▼・・ネムの木には、同じ木からとれた種子でもすぐに発芽するものと、なかなか発芽しなものととがあることが分かった。ところが、虫のついた種子はすぐ発芽し、虫のつかない種はなかなか発芽しないことが分かった。この方法は虫が芽を覚まさせているわけであった。
▼・・なかなか発芽しない山ウルシの種は、1か月ほど冷蔵庫に入れておき、28℃の恒温器に10日間入れるという過激で複雑な処理をすると、やっと目を覚ますという。
☆耐暑性は夜の気温がポイント
草花にとって、いちばんこたえるのは、夜に気温が下がらない場合です。昼間気温が高くても、夜になって、6℃以上下がれば、 草花はより楽に夏越しすることができます。草花にとっては、昼夜の気温差があることが大切で、耐暑性はかなり相対的なものといえます。
これは、気温が下がらないと夜間も昼間と同じ呼吸量になってしまうため。呼吸量は変わらないのに、夜のうちは光合成が行われないので、 草花の体内の炭水化物をそれだけ消耗することになってしまいます。 反対に夜温が低くなる場合は、10℃下がると、呼吸の量は半分になるので、より過ごしやすくなるというわけです。夏は夜温をなるべく低くするとベターとよく言われるのはこのためです。
夜温をさげるには、打ち水をしたり、風通しをよくしたりする工夫が必要です。 ただし、温度だけでなく、湿度が高いのも、草花にとっては負担になります。 日本の夏はそれでなくても湿度が高く、病気を招きやすい環境なので、空中湿度が高くならないことも大切です。
☆種をご購入いただいた皆様へ。
種を播くまでにしておきたい事。
@すぐに種を播くには
お届けした種は湿潤状態ですので、新聞紙を広げた上に広げて、表面を乾燥させてから播くよう にすると、巻きやすくなります。播いてからの殺菌剤噴霧は忘れずに!
A春播きするには
種子を消毒液に一昼夜浸けて、湿潤状態のまま冷蔵庫の野菜室で保管します。
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